高知女子大学看護学研究科(看護学)修了後、小児看護専門看護師取得。高知大学医学部付属病院で勤務。その後、大阪発達総合療育センター(児童発達支援センター)を経て、2019年4月より現職。現在、高知県立大学博士後期課程(看護学)在学中。
看護師の基礎教育における臨地実習から、どの領域においても出会った患者さんやご家族、医療職、看護教員の皆様から多くの事を教えていただきました。なかでも、小児看護の実習で出会ったこどもの生きる力に元気づけられ、小児看護に長く携わることができるよう、小児看護専門看護師の道を選びました。病気や障害がありながら生きるこどもの成長発達過程には、身体的な課題に加え心理・社会的なさまざまな障壁が存在します。小児がんや慢性疾患のあるこどもは、疾患に起因する基本的な日常生活の不安定さや、服薬の中断、不登校等、複雑に絡み合う心理社会的な苦痛を含む多くの困難や葛藤がありながら今を精一杯生きています。重度の障害のあるこどもは身体的苦痛が生じやすく、障害特性による見えづらさ分かりづらさがあるのですが、本来はあたり前の経験を重ねることを通して、気持ちの表出ができるようになり、定型発達のこどもと何ら変わりがない発達する力を有しています。病気や障害のあるこどもの家族の困難感は計り知れないのですが、家族の力で、あるいは医療職を含むフォーマル・インフォーマルな支援を得て、困難を乗り越えようと頑張り続けています。大学病院に在職中は、成人もいる小児病棟で勤務しながら、退院後の生活を見据えて外来、地域へと視野を拡げ、多くの関係職種との連携を通して、病院に留まらないネットワークづくりの重要性を学びました。また、療育センターにおいても、重症児の発達支援の醍醐味や多職種連携協働実践の中での看護師の専門性について再考、追及する貴重な経験となりました。
これまでの研究活動については、障害のあるこどものもつ力を育む看護師の発達支援など、こどものセルフケアに着目し、その力を育む看護の可視化に向けた研究活動に継続して取り組んでいます。障害のあるこどもが社会生活を営む上では、そのこどものもっている潜在する力が発揮できるよう、こども自身が人や場での経験を積み重ねていく機会を意図的につくっていくことが大切です。このような場には多くの専門職が携わっているのですが、病気や障害があることによるリスクに配慮し安全が守られる看護の担う役割は重要です。その他、高度実践看護師の役割開発に関する研究活動や、小児緩和ケアに関連する研究活動にも取り組んでいます。
さらに、教員になってからも小児看護専門看護師の役割遂行として、系列病院の成人小児混合病棟と小児科外来に不定期に兼務しています。現在、携わっている病院は主に心身症のこどもが受診・入院しており、未知の経験もありますが、こどもの発達等の特性を踏まえて勉強会や事例検討を行いながら、こどもと家族の抱える課題に合わせた支援のあり方を検討する機会をもっています。
これらの臨地での経験や研究活動を通して気づいたことを基に、看護学生とはさまざまな状況にあるこどもへの関わりを通して、倫理的な視点も踏まえて学生ならではの柔軟な発想、想像力が発揮されることを大切にしていきたいと考え、一緒に取り組んでいます。臨地実習では、病気や障害があることによって生じる異次元の体験を想像すること、病院・施設における既存の文化に囚われないこどもらしい本来の生活について視野を広げること、地域社会で生活する未来も見据えた看護支援の可能性を追求すること等を見据えています。また、総合病院の小児病棟、小児専門病院、小児科外来、NICU、重症心身障害児(者)施設という多様な病院施設の役割と機能を知ると共に、多様な場で生活の場の特性を踏まえた看護支援について考える機会を作っています。こどもに接する機会の少ない学生たちは、実習時には大いに緊張しているのですが、こどものことを知ろうと、こどもにかかわり、学び続ける姿勢はとても頼もしいです。実習期間は短いのですが、学生はこどもへのかかわりを通して、「こんなことができるんだ!」「こんなにちゃんと分かっているんだ!」「何もできないと思ってたのに、違ってた!」「絶対に説明が必要!」といったこどもがもっている力を見出し、その力に合わせた支援を考えることができるようになります。
これからも、病気や障害のあるこどもの成長・発達する力を育む看護支援について、研究活動や実践、臨地実習を通して探求していきたいと考えています。