202411

富山大学学術研究部医学系
鈴木 悟子

千葉大学看護学部を卒業後、精神科と混合内科病棟で勤務。その後、産業保健師として勤めながら千葉大学大学院看護学研究科にて看護学(博士)を取得。千葉大学大学院看護学研究科助教等を経て、現職。

ライフストーリーを用いた生活習慣病予防

 私は、現在、30歳代男性への生活習慣病予防に関する研究を行っています。病棟で勤務しているとき、生活習慣病で入院している方のお話に共通点があることに気づいたことがきっかけでした。
 共通点のうち一つは、生活習慣病で入院している人の中には、30歳代前後で、健康診断でその兆候があって受診をするように言われても仕事が忙しいと放っておいた、とお話しされる人がいるということでした。もう一つは、病気を診断されて入院しているのにも関わらず、自分は病気ではないとお話しされることでした。生活習慣病は、初期の段階では痛みや障害が生じることがなく、病気である自覚を持つことが難しい特徴があります。また、日本の死因や介護の原因となる疾患の上位に位置する疾患でもあります。健康診断でその兆候が出たときに、生活習慣を変えれば、病気にならずにすむことが多いのですが、長年の生活習慣を変えるのは難しく、悪化して亡くなったり、合併症をおこし、目が見えなくなったり、足を切断したりすることもあります。どうしたら、病気になる前に、生活習慣をより健康的なものに変えることができるのか、その方法を考えるために、大学院に進学しました。
 大学院では、特に成人学習とライフストーリーという考え方で、生活習慣病予防についての研究に取り組みました。学習というと、学校に通って勉強をするイメージがあるかもしれませんが、大人を対象とした成人学習はそれだけにとどまりません。また、ライフストーリーを語ることにはさまざまな効果があるといわれますが、私はライフストーリーを語ることでの学習に注目しました。
 生活習慣病予防は、ほかのだれかではなく、自分自身が取り組む必要があります。環境の影響もありますし、周囲の協力を得ることも重要ですが、意識するにしろしないにしろ実際に行動するのは、ご本人です。生活習慣病予防に関するライフストーリーには、子どものころからの生活のことや、現在の生活についての思い、今後どうなっていきたいかといった、過去と現在、未来をつなげる健康や生活に関することが語られました。これを語ることができる人は、主体的に生活習慣を変えることができていました。この成人学習とライフストーリーを用いた生活習慣病予防に関する研究を発展させながら、今は対象者である30歳代男性が使用する健康学習ツールの作成を行ったりしています。
 看護において、健康教育は重要な支援方法の一つです。研究だけではなく、学部教育においても、健康教育に関する理論や具体的な支援の展開を授業や実習で学生に指導しています。学部生や大学院生への教育での気づきもまた研究につながることもありますし、研究を通じて得た知識は教育の際に活用できることもあります。今後も、研究と教育に携わりながら、対象者が主体的に健康になるための方法を考えていきます。

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