202407

卒業式の際に撮りました

鳥取看護大学看護学部 助教
鳥取看護大学大学院看護学研究科 助教
廣田 颯香

鳥取大学医学部保健学科を卒業後、助産師として産婦人科・小児科混合病棟で勤務。その後2019年度に鳥取看護大学の助手として着任。2021年度より現職。鳥取看護大学大学院にて看護学(修士)を修了。現在、教員をする傍ら鳥取大学大学院医学系研究科医科学専攻(博士後期課程)にて学んでいる。

あたたかい看護職を育てる

 私が助産師になったのは、3歳の頃たまたま自宅分娩に立ち会わせていただいたことがきっかけです。生まれるシーンはある意味で衝撃的だと思うのですが、私が覚えているのはその瞬間のことでありません。旦那さんや上の子が「お母さんがんばれ!」と布団のそばで応援する姿と、その応援を受けて懸命に頑張り、ついには赤ちゃんを生んで充実感と達成感に満ちた産婦さんの表情を忘れることができないのです。生まれてきた命をあたたかく受け入れ、また新たな家族となっていくその様子がなんとも愛情に満ち溢れた素敵な空間だったことを今でも鮮明に覚えています。それ以来「助産師になる!」とまっしぐらに進み、夢を叶えました。臨床では命を支える緊張を感じながら、ケアではなく業務になっていないかと日々自問自答しながらも、女性や赤ちゃん、その家族を専門職として支援できるやりがいを感じていました。
 しかし人生は分からないもので、ふと教育に興味を持ち始め、引き寄せられるように教育の世界へと足を踏み入れました。教育を実践していく中で、看護は非常に高度な実践であるということをつくづく実感します。思考と心を動かしながらその手で実践し人々の命を支える、こんなにも高度な実践なのです。教育としてはその思考・心・技の基礎を育てることになるため、本当に簡単なことではないと身に染みています。特に現代の社会背景は複雑化しており、もとより看護は「正解がない」「正解はひとつではない」とされていますが、より多様な内容を求められています。そして感じるのは、教え育てることも正解はひとつではないし、受け手によって育ち方は様々であるということです。年々、成長の質や速度に変化はありますが、学生が真剣に学び、成長していく姿はシンプルにカッコいいと思いますし、将来に向けた明るさを感じます。先日ある学生と話していると、「看護って楽じゃないけど、おもしろいよ。この道を選んでよかった。」と言ってくれました。こんな時、「あぁ、教育っておもしろいな」とじーんと胸に来るものがあります。
 私は教員・研究者としてまだまだ未熟者ですが、「対象者がいいケアを受けられるように専門職を育てる」という根幹を大切にして励んでいきたいと思います。特に、私が関わる母性看護の部分では少子化という深刻な課題を抱えています。経済支援などの政策はもちろんですが、私たち看護職としてできることは何でしょうか?これについても様々な回答が考えられますが、ひとつは「生んでよかった」と思えるケアを女性や家族が受けることだと私は考えています。母や父としてスタートする周産期に、ケアを通してまずはその方自身が大切にされる体験を積んでほしいと思います。それはきっとあたたかな養育となって赤ちゃんに還元されていくのではないでしょうか。あの学生の言葉ではないですが、「育児って楽じゃないけど、生んでよかった。」そう思ってもらえる人が増えてほしいと思っています。私はこれからも素敵な看護実践をしてくれる担い手を育てていき、教育の立場からではありますが、いのちを育むという選択が広がるよう支援していきたいと思います。

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