浜松医科大学医学部看護学科を卒業し、東京医科大学病院にて勤務。浜松医科大学臨床看護学講座老年看護学助手を経て、千葉大学大学院看護学研究科博士前期課程を修了。セコム訪問看護ステーション勤務後、千葉大学大学院看護学研究科博士後期課程を修了。2016年より東京医科大学医学部看護学科在宅看護学に所属。
はじめまして。この度は貴重な機会をいただき、誠にありがとうございました。ここでは、私が研究課題として取り組んでいる訪問看護に関することや外来との連携について、どのような経緯でそこに行きついたかをお話させてもらおうと思います。よろしくお願いいたします。
私が「家のもつ力」に興味を持つようになったのは、東京医科大学病院の病棟看護師2年目頃に取り組んだ院内看護研究がきっかけでした。その研究では、私たちが退院指導を行ったALSの方々のお宅に訪問させてもらい、現在、皆さんがどのように生活しているか、退院後、どのようなことに困ったか、自宅で療養していることについてどのように考えているかなどを患者さんやご家族にインタビューさせてもらいました。この研究に取り組み、当時の私が一番衝撃を受けたのは、訪問させていただいた方々の表情が、入院中と違い、とても生き生きして見えたことです。私は、家のもつ力に圧倒された気持ちになりました。
その数年後、私は退院支援を行う部署に異動しました。当時、その部署では、自分が退院支援に関わった患者さんの訪問看護を行うことができました。また、外来通院しながら自宅で医療的ケアを行う人に対し、その方の外来受診時にお会いしたりし、色々な相談にのらせていただいたりしていました。その部署での経験から、私は病院から在宅へ移行する患者さんやご家族、外来通院しながら訪問看護を利用する人への関心が、より一層高まるようになりました。
その後、私は千葉大学大学院看護学研究科博士前期課程を修了し、セコム訪問看護ステーションに就職しました。訪問看護では、療養者さんやご家族がどのような生活を望んでいるかを尊重し、多職種で彼らを支えていきます。そういった「この人は本当はどうしたいのか。どのように生きたいのか」というところのアプローチを大切にする訪問看護は、私にとって大変興味深くありました。また、訪問看護は看護の力が発揮されやすい場です。その一方、自分たちの看護実践次第で、療養者さんやご家族は良くなったり悪くなったりします。そういった療養者さんやご家族の変化を目の当たりにすることにも、私はやりがいを感じていました。その他、私は病棟看護師だった頃に病棟で亡くなる患者さんを看ていて違和感を覚えるようになっていったのですが、その違和感は訪問看護で在宅看取りの経験が増えていく中で払拭されていきました。セコムでの訪問看護経験から、私は「自分がやりたい看護は訪問看護にあった」と確信しました。そして私は、「訪問看護に少しでも貢献していきたい」という思いを抱くようになりました。
今から10年前、私はセコムから、アメリカオハイオ州にあるクリーブランドクリニックへ研修に行かせていただきました。研修では、クリーブランドクリニックの訪問看護ステーションにも行かせていただき、アメリカ人の訪問看護師と同行訪問させていただきました。そこで感じたことは、「アメリカと日本の訪問看護において、ケアシステムに違いはあっても提供される看護に差はない」ということでした。この経験は、私に自信を与えてくれました。
東京医科大学病院やセコム訪問看護ステーションでの臨床経験を経て、現在、私が研究課題として取り組んでいることは、外来患者の訪問看護利用に向けた支援や、訪問看護師と外来看護師の連携を促進するような研究です。また、現在、私は教員という立場にいますので、看護学生に訪問看護の魅力をどうしたら伝えていけるかを日々考え、研究としても取り組んでおります。研究活動をとおして訪問看護を少しでも社会に知ってもらったり、看護学生に訪問看護の魅力を伝えたりし、訪問看護に貢献していきたいと思っております。