大分県立看護科学大学卒業後、大分県済生会日田病院で看護師として勤務。大分県立看護科学大学大学院で助産師資格を取得し、葛飾赤十字産院で分娩室とNICUで勤務。その後、母校で教育に携わりながら2020年博士(健康科学)取得。2020年度より現職。現在は、助産師として週1度の臨床勤務を活かしながら、教育・研究に励む日々を送っている。
私は人と接することが大好きで「その人らしく生きぬくことを支援したい」と看護の道を志しました。看護師として、たくさんの方の人生の貴重な時間を共有させていただく中で、「人生のスタートから"いのち"を支援したい」「いのちを育む家族に寄り添いたい」という思いが芽生え、助産師になりました。
一人ひとり顔が違うように妊娠する経緯もその後の経過も異なりますが、わが子を見つめ幸せそうに微笑む母親のキラキラした笑顔が、私の原動力になっています。出産までの道のりは大変なこともありますが、妊娠・分娩には必ず終わりがあります。しかし、お産後に続く育児には終わりがありません。そのため、地域や多職種と連携を取りながら、助産師として新しい命と家族の人生を継続的に支援していく毎日にやりがいを感じていました。そんな時、母校の教員として教育・研究に携わってはどうかとお誘いを頂きました。臨床が大好きだった私はとても悩みましたが、「臨床も教育も目標は同じ」という恩師の言葉に背中を押され、教員の道に進みました。
私が教育・研究活動を通して得たのは、「仲間」です。教育活動では、たくさんの修了生が助産師になり、「母子とその家族のために働く仲間」になって全国各地で活躍してくれています。嬉しいことに、臨床を経験し、教員として「助産師学生を育てる仲間」として帰ってきてくれた子もいます。教育(人を育てる)の成果が形となるには時間を要しますが、一人でできないことも同じ志を持つ仲間とだったら成し遂げられると信じ、一緒に一歩ずつ前に進みたいと思っています。
研究活動では、医学・工学・理学・芸術・企業など異分野の方とのつながりを得ることができました。その出会いにとても刺激を受け、現在、科学的根拠に基づいた新生児皮膚の最適な保清方法の確立に取り組んでいます。新生児の皮膚バリア機能を良好に保つことが、母児の心身の健康とQOLの向上に重要であると考えています。そのため、本質を捉えた看護ケアの提案に向けて、マウスや細胞を用いたラボワークに加え、実際に新生児の皮膚内部の炎症反応をバイオロジーの手法を取り入れた非侵襲的評価を試みています。
今私は、あの時背中を押してくれた恩師の言葉を、「臨床(助産)も教育も未来のための仕事」と解釈しています。働く場所や専門分野が異っても、情熱と共通の目標をもったたくさんの仲間と仕事ができることに幸せを感じています。これからも感謝の気持ちを忘れずに、私自身も成長できるように自己研鑽に努めてまいります。